第25回逍遥書道会展


【第25回逍遥書道会展】
2010年4月10日(土)−13日(火)イオンホール(イオンモール日の出2階展示室)

テーマ:『万葉集・関東を中心として』
    『地域社会』に根ざし、『伝統書道』の楽しさを広めよう
    「万葉集」と関東地方、当時のあきる野などをテーマとして、講演と
     作品展を開きます。
作品:	毛筆(テーマ作品、年間作品、創作、臨書、漢字、仮名、学生部作品、軍道和紙作品)
	公文書写作品(ペン、筆ペン、かきかた)
    老健施設ファミリート日の出書道部作品
特別展示: <筆> 大小の筆、珍しい各種素材筆(赤ちゃん、猿、猫、牛、馬、羊、藁)


【第16回逍遥書道会講演会】
2010年4月10日(土)13:00から15:00 (展示会場に同じ)

内容:万葉集・関東地方を中心にして
模範揮毫・パフォーマンス書道  逍遥会     講師・子供生徒有志
講演1:	書を楽しむ   	佐賀大学教授  竹之内幽水先生
講演2:	万葉集・関東中心として	逍遥書道会      中村海洞


展示および講演会



パフォーマンス書道



『万葉集』 関東を中心として

―第25回逍遥書道会展・講演会―
逍遥書道会 主宰中村 海洞  

はじめに
日本の国家としての いしずえ は奈良時代に形成されたといってよい。奈良時代は決して平安温和な時代では無かったが、日本の国家が形成されてゆく時代のエネルギーに充ち あふ れ、今の私達につながる民族の文化・情念が雄々しく、また情緒的に はぐく まれた時代であった。
今年は、奈良時代の和銅三年元明天皇の平城遷都から1300年記念の年にあたる。『万葉集』は奈良時代の人の心を映し出す最大の文化遺産の一つであろう。今回の逍遥展テーマはこれに因み、万葉の時代の昔に想いを せ、『万葉集』の「 東歌あずまうた 」や「 防人歌さきもりうた 」を取り上げて、当地や関東の往時の姿を語ることとした。

万葉集
『万葉集』は、日本に現存する最古の歌集である。奈良時代の歌集20巻。 大伴家持おおとものやかもち が現存の形に近いものにまとめたとされる。宝亀二年(771)以降の成立とされているが成立年未詳である。
万葉集は誰によって、なぜ、どのように編集されたのか? その理由や起源を明記する同時代資料が無く、定説といわれる程のものを見ない。学問論議上の根拠とされている説は、 平城天皇へいぜいてんのう勅撰ちょくせん 説と大伴家持の 私撰しせん 説が基本になっている。前者は『古今和歌集』の 仮名序かなじょ真名序まなじょ の記載「平城天子侍臣に みことのり して万葉集を撰せしむ・・」などの、後者は江戸時代の学者、 契沖けいちゅうあらわ した『万葉代匠記』の「家持卿の私の家に若年より見聞に随いて記しおかれたるを、十六巻までは天平十六年十七年までに・・・」などの記述を論拠にして進められるものが多い。近代の学説における成立論は、『万葉集』は一人の編者の一貫した考えで編集したのでなく、長い間かけて複数の人間による数次の撰を経て、最終的に今の形になったと考えられている。
『万葉集』には短歌、長歌、 旋頭歌せどうか 、仏足石歌、 連歌れんが の五体で歌数4516首が収められている(日本古典文学大系)。詠われた詩は仁徳天皇の皇后 磐姫いわのひめ の作と言われる歌から天平宝字3年(759)大伴家持の歌まで三百数十年にわたる全国各地、各階層の人の歌に及ぶ。宮廷で詠われたものから、地方色、庶民性豊かな「東歌」、「防人歌」などを含み、豊かな人間性を素朴、率直に表現した歌が多い。これらは万葉仮名を多く用いて記述されている。
万葉集の原本は現在伝わらないが、最古の伝本として、五大万葉集と呼ばれる平安時代の写本の@桂本・A 藍紙あいがみ 本・B金沢本・C元暦校本・D天治本が存在する。 これらはいずれも、今でも書道の仮名書のお手本とされる見事な筆跡ぞろいである。しかし残念ながら、全て完本ではない。現在に伝わる、全20巻すべてそろった最も古いもの(完本)は、鎌倉時代後期の写本、『西本願寺本万葉集』と呼ばれているものである。

関東の『万葉集』
東歌
「東歌」は『万葉集』巻14に収められた短歌230首の総称東国歌謡で構成されている。これらはすべて短歌で,作者は不祥である。国名を明記するものは90首。民衆の生活と感情が東国方言を交えて詠みあげられており,本来は古代東国に 口誦こうしょう されていた在地歌謡だったと考えられる。 巻14に 部立ぶだ てが有り、東歌(5首)、 相聞そうもん譬喩歌ひゆか雑歌ぞうか防人歌さきもりうた挽歌ばんか が収められており、これからゆけば「東歌」はわずか5首となるが、巻14全部の230首を指すのが一般的である。これらの歌は、性愛表現の直截性や、特殊な 語彙ごい (方言など)・語法においてもきわめて特異である。
防人歌、
『万葉集』には防人のために徴用された兵や、その家族が詠んだ歌が収録されており、「防人歌」と総称される。関東地方など東国の言葉が使われている事も多く、「東歌」ともに古代の生活様相を伝えている。「防人歌」は巻13や巻14にも少量見えるが、巻20に「天平勝宝七歳乙未二月、相替遣筑紫諸国防人等歌(あい替わりて 筑紫ちくしつか はさるる諸国の防人らのうた)」として収録されているものを主にいう。
これは天平勝宝7年(755)に徴集された防人の詠んだ歌を、防人を率いて来た各国の 部領使ことりづかい に命じて記録、上進させたものを採録している。 拙劣歌せつれつか としてその半数近く(82首)が棄てられてはいるが、採用された歌については、作者の名前から出身国(国によっては郡名まで)まで記されている。
身近な東歌・防人歌から
武蔵の国については『万葉集』巻20に『同じ(2月のこと)二十日、武蔵の國の部領防人使掾正六位上安曇宿禰三國が進むる歌十二首』として上進されたことが記されている。
「東歌」「防人歌」の中から身近なところを舞台とした歌三首を挙げ、その歌の解釈とそれを詠まれた時代と地域の様子を述べる。
◇多摩川に さらす手づくり さらさらに なにそこの児の ここだかなしき 巻14・3373
さらす手作り(調布)の風習は、和銅四年に「 桃文師あやどりのし 」が国内二十一国に派遣されたことより全国に広まったことが『日本書紀』に記されている、多摩地域では桓武天皇期に布田(現在の調布市)の菅家の所縁広福長者らの指導に依り定着して行ったことが『新編武蔵風土記』に記されている。 関東各地に調布、布田、白糸、砧、麻布のような名前が地名として残っているが、これはこの地域に「さらす手作り」が到るところで行われたことを物語っており、この歌の背景になっている。
◇赤駒を山野に放し捕りかにて多摩能横山徒歩ゆか遣らむ  巻20・4417
武蔵國の防人達は、武蔵國の国府(現在の府中市、大国魂神社)に参集し、多摩川を渡り足柄峠を通り、富士山を見て東海道を上り難波津から船で大宰府へ向かったようである。この歌は現在の八王子市横山近辺にその名を残す多摩丘陵付近を舞台としているとの説もあるが、広く多摩川丘陵一帯を指すものであろう。武蔵国府から大宰府へ向かう防人の妻が、夫に向けた 手向けたむけ の歌と考えられ、詠われた歌の当時の状況と、その虚実についての考察を紹介した。
◇武蔵野の 占部うらへ かた焼き 真実まさに でも らぬ君が名 うら に出にけり 巻14・3374
古代には関東地方一円に「 肩焼かたやき 」神事が有った。今、多摩地方では青梅御岳神社神事(青梅市)、埼玉 鹿見ししみ 塚遺跡(川越市富士見町)、埼玉金鑚神社(埼玉県児玉郡)の神事、 阿伎留あきる 神社(あきる野市)の 太占ふとまに 神事に見られるように、「肩焼」は万葉の時代には関東のあちこちに行われた文化であった。「名乗らぬ君が名」の意味するところは何かが大きなポイントであり、古代の言霊信仰との絡みでの説明を試みる。

逍遥書道会講演会
逍遥会、中村海洞は先にのべた『万葉集』関東を中心としてのような内容で、『万葉集』から当地あきる野や関東地方に関係する「東歌」「防人歌」に焦点を当て基調講演を行いました。講演や作品制作の典拠としては、『日本古典文学大系』(巻4,5,6,7)、地域考証に『新編武蔵風土記稿』(正保年中版)などを用いました。

佐賀大学の竹之内幽水先生の講演では「書を楽しむ」をテーマとし、その内容は「書は芸術か」、「芸術であるとすればその特長は」、「なぜ少字数か」を語って頂きました。
佐賀大学生を対象にした書の魅力についてのアンケートを基に、伝統性、美術性、心理性の観点から分析すると書の特徴が端的に見えてくる。書と料理(食材、包丁、調味料、皿)の対比から書を表現する素材、要素を具体的に解り易く拾い上げ、書の線は骨、筋、肉、響き、香りが有り、霊が宿るもので点画の外に点画が有るものだと説く。書かれた字の良さは、単に書の上手い下手でなく、一生懸命に書かれたものこそが美しいのだと。その例として、野口英世の母の書簡を例に挙げる。また、トルストイのいうように芸術とは「ある意図でもって、美的感動を他者に伝えること」ならば、少字数作品表現は、美的感動を文字に託し他者に伝えるには適していることを述べ、その最高の作品に位置するものの一つは、手島右卿の「崩壊」であろう。これを分析すれば実に明快で大胆で合理的な構成になっている、というのが講演の趣旨でした。

模範揮毫
今回の講師模範揮毫で、竹之内幽水先生は、「飄」「馳」の二題を、135x105cm大の紙に大胆 流麗りゅうれい に書きました。幽水先生の大筆を揮う前後の解りやすい軽妙な解説に会場の皆さんは大いに湧きました。今回の講演の内容趣旨とこの模範揮毫とあわせての両面から「書」の創作の世界を存分に納得して頂くことができました。

パフォーマンス書道
子供のパフォーマンス書道は、逍遥会学生部有志が、テーマ「夢」と「楽」を演じました。「夢」では、お 馴染なじ みのドラえもん主題歌に乗って、生徒の皆さん全員が「あんな夢、こんな夢」を思い思いのスタイルで「夢」「ゆめ」「YUME」などと200x270cmの巨大紙に書きました。「楽」では、同じサイズの紙に、「人生楽ありゃ苦もあるさ・・」でなじみ深い水戸黄門の主題歌「ああ人生に涙あり」を流しての全員リレーで「楽」の字の合作作品を書きました。 落款らっかん には「人生」「くじけるな」の字を入れて完成させました。演技は全員お揃いの「逍遥」と書かれた黒のTシャツを着て、力強く、楽しく、ほほえましく演じました。生徒のお母さん有志が、墨の入ったバケツを持って、演ずる子供達のサポートに回り、出番を控えている子供達は音楽に合わせて手拍子で応援しました。会場の皆さんから、「楽しさが伝わった」、「勇気や元気を頂いた」、「上手なのに驚いた」、「来年もやってほしい」などの声が寄せられました。作品は会期一杯、会場内に展示いたしました。

第25回逍遥書道会書道展2010月4月10日(土)から13日(火)イオンモール日の出イオンホール
テーマ:『 万葉集・関東を中心として 』
作品:	毛筆(テーマ作品、創作、臨書、漢字、仮名、学生部作品、軍道和紙作品)
	公文書写作品(ペン、筆ペン、かきかた)
第16回逍遥書道会講演会 2009年4月10日(土)13:00から15:00 (展示会場に同じ)
講演1:	書を楽しむ      	佐賀大学教授	竹之内幽水先生
講演2:	万葉集・関東中心として	逍遥書道会	中村海洞主宰
模範揮毫・パフォーマンス書道:	講師・逍遥会学生部生徒有志



主催 逍遥会(あきる野文化連盟所属団体)
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